2015/6/04

大人向けキャンディーのセレクトECサイト「Sugarfina」

尼口友厚(カート株式会社 CEO)

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数年前から「大人のきのこの山」「大人のたけのこの里」という、人気商品の大人向け版を見るようになった。従来より落ち着いた配色のパッケージデザインで、大人向けの味わいをうたったお菓子を見る機会が増えてきた気がする。

そういう傾向は米国でも見られるようだ。今回はこうした「大人向けお菓子」を取り扱っているサイトの中から、「Sugarfina」をご紹介しよう。同サイトはかなり本気で大人に向けたお菓子選びに取り組んでおり、自分たちで世界中を回って厳しく審査し、米国ではなかなか手に入らないような珍しく、新しく、美味しいお菓子を多数販売しているサイトだ。

同サイトは米国ロサンゼルスで2012年に設立。2013年度の収益は100万ドル(約1億2000万円)以上と推定されている。

創業のきっかけはデートサイトでの出会い

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Sugarfinaの創業者のRosie O’Neill (写真左。以下オニール)氏とJosh Resnick(以下レズニック)氏は夫婦であり、ビジネスパートナーでもある。

CEOのレズニック氏は1992年にペンシルベニア大学を卒業した後はゲーム会社を起業したり、ゲームのプロデューサーとして働いてきた。

共同創業者でありレズニック氏の妻でもあるオニール氏はカリフォルニア大学を2000年に卒業して以来、一貫してマーケティング畑で働いてきた人物で、バービー人形を販売しているMattel社のマーケティング担当者だったこともある。

2人は2010年、Match.comというデートサイトで出会った。サイトのプロフィール欄には書いていなかったが、2人はともに大の甘党で、幾度かデートを重ねる中で趣味や嗜好を話すうちにお互いに甘い物好きであることが分かり、意気投合していったようだ。

レズニック氏らには、特にキャンディ業界に対する不満があった。チョコレートはお菓子というジャンルの中でも、世間からの注目度や評価が高い。中には芸術品のような扱いを受けているものもあるほどだ。一方でキャンディにも職人がデザインして作ったような、おもしろさと、美しさを備えたものはあるのに、ジャンクフードという評価、あるいは「子ども向けの食べ物」という範疇から抜け出せないでいたのだ。

2人はこの問題意識を共有すると、デートの最中であったにも関わらずキャンディ業界を変革する可能性を探るべくブレインストーミングを始めた。そこで2人が気づいたことは、キャンディ業界には洗練されていて、信頼に足るECサイトがないということだった。

それならば自分たちでそういうサービスを作ろうじゃないか、と考えた2人は、まずはイタリアやドイツ、ギリシャなどを訪れ、世界の眠れるキャンディを追い求めた。そして総計125以上のキャンディを収集すると、2012年の8月には「Sugarfina」というWebサイトを立ち上げ販売を開始した。

キャンディの梱包、サイトのデザインなどはオニール氏が担当し、ファイナンス、戦略はレズニック氏が担当、結果としてSugarfinaは急成長を遂げ、立ち上げからたった一年で100万ドル(約1億2000万)の売上を上げるにいたった。

大のキャンディ好きが世界中を旅して見つけた良質なキャンディのみ販売

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多くのキャンディショップが子供を対象としたお菓子を販売している中にあって、Sugarfinaはハイエンドなグルメ市場に狙いをつけ、高級感のあるキャンディ類を取り揃えているのが特徴だ。

同サイトで取り扱っているお菓子は、2014年時点で150品ほど。内容はタフィー(キャラメルやキャンディなどのあめ菓子のこと)、チョコレート、フルーツ&ナッツ、グミ、マシュマロ、リコリス菓子などに大別できるようだ。これらのお菓子のうち実に30~40%ほどが、米国においてはこのサイトでしか入手できない、希少なお菓子なのだという。

これら世界の珍しいお菓子の情報は、米国にいてはまず手に入らない。そのためレズニック氏とオニール氏は現在も頻繁に世界中を駆け回って、自分たちの足で商品を見つけている。

2人が1年間にまわる国はおよそ5~7カ国。おいしく、新しいお菓子を発見するために、キャンディを作る職人に会ったり、時には小さな村を訪れることもある。2014年時は日本、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、イタリア、ギリシャ、その他数カ国をめぐることを計画しているとあった。

またオニール氏らは、見つけたお菓子がサイトに相応しいかどうかを判断するため、かなり厳しく審査をしているという。ソムリエがワインをチェックするとき、まず色を確認して状態をチェック、つづいて香りをかいで口に含み、ゆっくり味わうが、これと同じような要領で、まずは色やビジュアルをチェックし、香りを確認し、食べて味わいを確かめ、さらに後口がどんなものかをチェックし、審査内容を詳細に書き留めているそうだ。

2人が味見するお菓子の数は1週間に数十品目ほど。一度の味見だけでサイトに掲載することを決めるのではなく、1回目の審査をパスしたキャンディは後日また味見して、サイトの掲載するかどうかの最終決定を下している。

ちなみに「かなり冒険的な食い道楽」を自称するオニール氏は、怪しい食べ物であればあるほど食べたくなる質だと話しており、レズニック氏ともども珍しい食品に惹かれるところがあるようだ。

そのせいかSugarfinaのラインナップにも、ドイツのシャンパンを注入したグミベア(クマの形をしたグミのこと)の「champagne bears」や、純金をあしらったマシュマロ、かつては禁断の酒と呼ばれていたアブサンとチョコレートをコラボさせた「Absinthe Chocolate Cordials」など、なかなか他ではお目に掛かれなさそうな品もある。

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他にも天皇家も好まれているという日本の金平糖「Kyoto Blossmos」なども見ることができた。オニール氏によると現在のラインナップはまだ欧米のものが多すぎると感じており、その他の地域のお菓子をもっと加えていきたいという。これまでのお菓子の常識に囚われず、自分たちの足と舌で新たな味を発見し、日々数々のお菓子を揃えていることが、同サイトの商品の独自性を支える大きな強みとなってるのだ。

お菓子業界のメインターゲットは移動中?

SugarfinaはECサイトでの成功を受け、最近ではカリフォルニアのバーバリーヒルズに実店舗もオープンした。他では食べられないキャンディ類を扱っていることは確かに大きな強みだが、なぜ同サイトがそこまで多くの人々に支持されたのだろうか。

その背景には、米国における食品の消費の変化もあるようだ。National Confectioners Assn(全国菓子協会)の調査によると、2014年度の米国のキャンディ類の消費は約336億ドルで、2010年度よりも9.8%も上昇しており、安定した成長を見せているという。

中でも期待されているのが「大人向けのキャンディ」だ。これまでキャンディ企業は伝統的に14歳以下の子供を主な利用層と想定してきたが、子供の肥満に対する意識の高まりや若い人が減ったことが原因で、お菓子業界の目は徐々に大人向けにシフトつつある。

たとえば「IT’SUGAR」はサイトの説明の中で、50~90年代のノスタルジックなレトロ・キャンディを取り揃えていると記している。これも大人の利用層に注目してもらうための工夫のひとつだろう。

20150604_f(「IT’SUGAR」のトップページ)

”大人向けのお菓子は数年前までは基本的に未開拓でした。だから革新の余地はたくさんあるのです”
 - 業界アナリスト Amal Ahmad氏

こうした中にあって、自分たちでワインに似た厳しい審査を設け、品質にこだわった商品の取りそろえを行っている本物志向のSugarfinaはいち早く「大人」な利用層からその価値が認められたのだ。

社会的な変化などにより需要や嗜好が移り変わる中では、これまで注目されていなかった層からのニーズがにわかに掘り起こされることがある。これまである層には浸透していなかった商品やサービスが、これからも通用しないとは限らない。問題はどのようなやり方であれば、その層に需要を感じて貰えるかということなのだろう。

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